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みなさん、こんにちは!
このコラムは、子どもたちの運動能力を高めるために様々な角度から「からだを操作する力をはぐくむ」方法を紹介していきます。
幼少期に体を思い切り動かしのびのび過ごすと、何事も意欲的に取り組む態度が養われ、健やかな心の育ちも促す効果があります。
ぜひ、日頃子どもとかかわる中で、参考にしてくださいね。
前回は、幼児期は、「姿勢」「腕の振り」「膝の上げ」よりも先に、体を自由に操作できる反応のよい『エンジン』と柔軟性のる足部(足裏)「タイヤ」装備して『それらを細かくつなぐ配線』が大切とカーレーシングに例えて紹介しました。
★前回の記事はコチラ!⇒「徒競走は「スタートダッシュ」がカギ!両足ジャンプで高めよう~その1~」
情報社会中で生きている私たちは、様々なジャンルの情報を取り入れ実践できるようになりました。例えばインターネットで「速く走る」とキーワードを入力すると靴のメーカー、元オリンピック選手、現役社会人選手など、様々な方たちが理論的に実践的に時には動画をアップしています。私も様々な角度から情報を取り入れることができ、とても勉強になります。
この情報をそのまま実践すると、どうなるでしょうか。
今回は、『「走る」一歩間違えると「運動嫌いに」』というテーマで、スポーツ庁が実施した平成29年度「全国体力・運動能力・運動習慣調査結果」を紹介しながら、「速く走るコツ」について考えていきます。
例え小学校高学年でも中学生になったとしても、自分の体を自由に操作する能力がそなわっていなければ、速く走るコツの「姿勢、手の振り、膝の上げ方」という技術習得を練習しても、習得まで時間がかかります。
このように正確な情報を手に入れても、子どもへ与えるタイミングを間違えると、技術的に「できる子」「できない子」が生まれ「できない子」は苦手意識や劣等感を感じてスポーツから離れてしまうことにつながり、最悪の場合は怪我につながります。
「走る」という簡単な動きですが、後天的にかかわる私たちが簡単に「運動嫌い」の原因をつくってしまいます。スポーツは、他人から見ても「できる・できない」「速い・遅い」などが見てわかります。徒競走などで足が速い子どもは自信をつけ、逆に「できない」子どもは、周りの目を気にして、それがストレス又は嫌いという原因の一つとなり「恥ずかしい」=「嫌い」となってしまいます。
幼児期には、体を動かすことが好きで、公園や園庭ではニコニコ追いかけっこなどしていた子どもたちが、小学校、中学校の体育になると、数%ですが、嫌いになってしまっています。
学習要領が変わるまでは、「できる」「できない」「うまくならなければならない」「勝たなければならない」「頑張らなくてはいけない」など、子どもたちに技術を追い求めすぎていました。
運動は「上手にできること」がすべてではなく、「上手にできなくても」大丈夫であり、重要なことではありません。
子どもたちは「生涯楽しく運動をつづけること」「生涯自分の足で移動する」ことが最も大切なことだと筆者は考えます。歳を老いても自分の足で「歩く」ことは、人間にとって重要な行動となります。
生涯自分の足で「歩いて」移動でき、そして「走る」ことができたら、なんて素敵なことでしょうか。
さてここで、小学生・中学生を対象に「運動の好き嫌い」を調査した結果を紹介します。
卒園した子どもたちは、どのような回答をしたのでしょうか。
スポーツ庁で平成29年度実施した「全国体力・運動能力・運動習慣調査」より引用 (問)「運動やスポーツをすることは好きですか」 (対象)小学校5年生から中学生2年生 |
(回答結果)
「好き・やや好き」小学校5年生90.4%、中学2年生 83.7%と高い数値。
「嫌い・やや嫌い」と答えた割合は小学校5年生が9.6% 中学2年生が16.3%、その中でも中学2年生女子は21.5%となっています。
見ていただきたいのは、「嫌い・やや嫌い」です。
統計によるとスポーツが嫌いな子どもは、「運動やスポーツが大切ではない」「体育の授業は楽しくない」という考えを持っている層が多くいるそうです。
2012年3月より前の幼児期運動指針で学んでいた子どもたちが、学校体育嫌いとなってしまっているのが現実です。
スポーツ庁は、《スポーツの価値は「楽しさ」「喜び」を知ってもらいたいと》であるとし、中学生全体の16.3%のスポーツ嫌いを8%まで減らし、「スポーツ嫌いの子ども半減させること」を目標に掲げています。「運動嫌い」をターゲットにしたわけです。
この目標に対する具体策として、文部科学省とスポーツ庁は、2021年度から、改訂した中学校学習要領適用をスタートしました。2020年度は改訂した小学校学習要領の適用をスタートさせていますので、これでやっと幼少期から中学まで一貫した取り組みとなります。
子どもたちに、小学校・中学校へ行っても「体を動かすことが好き」と心から思ってもらうためには、今皆さんの園にいる子どもたちが運動を通じどのような体験をするかが重要です。
「保育園で体を動かすことがとても楽しかった」「あの頃から体を動かすことが好き」「保育園の徒競走は、1番ではなかったけど一所懸命走ってゴールしたら笑顔で先生が迎えてくれてとてもうれしかった。」「できなくても一所懸命頑張ると保育園の先生はすごく褒めてくれた。」これからも引き続き運動好きの子どもたちの声をたくさん聴きたいですね。
幼児期は、発育発達に合わせて上手に運動をアプローチできれば、細かい配線がつながり、小学校高学年の頃には「姿勢」「腕の振り」「膝の上げ方」がうまく体が操作でき、しなやかに スムーズに足を運び、力強い走りが期待できます。「体を操作する能力をはぐくみ」、様々な動きが器用に操作できる基盤づくりをしていきましょう。
次回は、いよいよ徒競走のスタートダッシュに注目して、「自分の体をどのように操作すれば」良いスタートダッシュができるのか、「速く走れるようになるために」幼児期の基盤づくりを紹介します。
執筆者の著書で、より詳しく子どもの運動について学べます!