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運動から五感を育てよう!~その2~

 みなさん、こんにちは!
 このコラムは、子どもたちの運動能力を高めるために様々な角度から「からだを操作する力をはぐくむ」方法を紹介していきます。幼少期に体を思い切り動かしのびのび過ごすと、何事も意欲的に取り組む態度が養われ、健やかな心の育ちも促す効果があります。
 ぜひ、日頃子どもとかかわる中で、参考にしてくださいね。

 さて前回は、基礎的な情報源「五感」についてお話ししました。今回は、五感の情報収集と神経系の発達について取り上げていきます。その中での身体運動に直結する「触覚」「視覚」「聴覚」についてお伝えします。

五感(情報収集)と神経系の発達

 感覚器官による情報の収集から筋肉の収縮までの一連の過程は、感覚受容器―感覚神経―中枢(脳)―運動神経―筋肉 という経路があり、それぞれの機能の発達が成熟に向かうにつれて、スムーズな身体運動が可能となります。
 身体運動に直結する感覚は、主に「触覚」「視覚」「聴覚」となります。幼児期は、「触覚」「視覚」「聴覚」の機能の発達を考えると外界の変化の情報収集が十分な状態に達しています。

【触覚の発達】  原始感覚ともいわれ、発達は比較的はやい。

 生まれたての新生児でも唇や舌などの触覚はよく発達しており、刺激に対して大変早いです。これは母乳に依存して栄養を保つための合理的な機能です。
 触覚と似たような感覚である温覚も比較的早く発達します。乳児は人工栄養の場合、熱すぎたり冷たすぎたりすると明らかに拒否反応をします。生後3 ~ 4 か月になると手に触ったものを積極的につかもうとします。次第に月齢を重ねるに従い、偶然触ったものではなく、ある目的をもって手を伸ばし、ものをつかもうとします。いずれにしても、幼児期に、触覚・温覚・痛覚などの皮膚感覚(触覚)は一応できあがっていると考えてもよいでしょう。

【視覚の発達】  感覚の中でも最も重要な感覚です。

 生まれて直後の新生児は、まだ視覚で外界認知することはできません。しかしおおむね3 ~ 5 週目で、次第にごく近い距離のものを注目するようになります。おおむね3 ~ 4 か月で、首がすわるようになると急に視覚が発達し、特定のものを注視したり、動くものを追視したりできるようになります。
 色の識別も意外に早いとされていて、とりわけ黒・白・赤などはっきりした色が見えると言われています。情報収集には、視覚の発達がきわめて重要な基盤となります。

【聴覚の発達】  幼児期にはリズム感も発達し音の高低の識別もできる。

 そのため音楽は早くから親しみたいものです(生後1 か月にもなると音のする方向に顔を向けようとします)。

 このように私たちは「五感」から様々な情報を脳に伝え、情報処理をして行動をしています。このように一般的には「触覚」「視覚」「聴覚」を刺激しながら体を動かす楽しさを伝えていきますが、「嗅覚」も刺激をすると子どもたちの記憶に残りやすくなります。

 最後に、嗅覚にまつわる、「保育者の行動あるある」と、「運動遊びにおける嗅覚の取り入れ方」をご紹介します。

「保育者の行動」あるある!(嗅覚編)

 洋服に名前のない子どもたちの忘れ物。
 ある保育者は、嗅覚をつかい、忘れ物の洋服の匂いを嗅いで「〇〇ちゃんの忘れ物」なんて当てる方もいます。これは匂いを記憶にとどめている証拠です。
 面白いことに、その行動をみている子どもたちは、そのクラスの子どもは、記入してある名前を見ないで「はい〇〇ちゃんのトレーナー、どーぞ」など渡している光景をみます。渡す前には保育者同様に、嗅覚をつかっています。

運動遊びにおける五感の取り入れ方(嗅覚編)

 「走って鉄棒の匂いを嗅いで戻ってこよう」ゲーム!

 ・場所:鉄棒のある公園
 ・保育者の「よーいどん!」の掛け声で、子どもたちは鉄棒に向かってダッシュ。

 子どもたちは鉄棒の前でスピードを落とし、鉄棒の匂いをかいで戻ってきます(※鉄棒にぶつからないよう、声掛けや保育者の配置が必要です)。
 走って戻ってきた子どもたちに「鉄棒は、何の匂いと一緒?」と聞きます。その時に「〇〇と一緒」と経験した匂いを思いだし答えてもらいます。
 様々な答えが飛び交う中、ある子どもが答えました。

「お父さんの靴下の匂いと一緒だ!」 たしかに凄い感覚です。

 大人になった私たちなら、嗅覚の前に「コイン(お金)・ハンマー」など、「鉄」という素材の共通点が先行するかもしれません。

 嗅覚をはじめ、目で見て、耳で聞いて、肌で感じ、舌で味わい、私たちは、全て「五感」をつかって、記憶にとどめることができます。

 「感覚」を最大限に使って体を動かすことは、確実に脳を使い、神経線維が絡み合い、様々な動きが習得され、さらに「見たもの」「聞いたもの」「匂い」「肌で感じたもの」が記憶に残ります。

 いよいよ次回は、発達に合わせたアプローチ方法を紹介します。
 お楽しみに!

筆者の著書で、より詳しく子どもの運動について学べます!

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