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保育という営みの中で、保育者が苦労する点はいくつかあります。多忙な中、保育の記録をつける、というのもその1つだといえるでしょう。
近年その保育の記録に、「ドキュメンテーション」という写真にコメントを添えるという手法が加わりました。
これは1960年代に始まったレッジョエミリア・アプローチ(イタリア)において使われた手法で、今では世界各国の教育機関で使われています。日本でも保育の「見える化」にもなり、研修や保護者・子どもたちとのコミュニケーションに役立つとして人気が出てきています。
ここで、ユニークなドキュメンテーションの使い方をしているニュージーランドの例をご紹介しましょう。
ニュージーランドではドキュメンテーションを「ラーニング・ストーリー」と名付けています。園の記録としてだけでなく、保護者へ渡す保育記録もこのラーニング・ストーリーを使っています。
子ども1人1人について、子どもが誰とどんなことをして遊んでいて、どんな学びを得ているのかを、保育者が写真とコメントで示します。各月のラーニング・ストーリーはファイルに綴じられ、園に置かれます。なおかつ子ども自身がいつでも手に取れる場所に置きます。自分の写真が載っているラーニング・ストーリーが大好きで、絵本のように繰り返し見ている子もいるようです。
個人的に凄いなと感じた点は、ニュージーランドのラーニング・ストーリーが、教育要領(ティファリキ)と直結している点です。これを日本に取り入れるとしたら、どのようになるでしょうか。以下に一例を示します。
上記写真を4歳児のドキュメンテーションに使う時、「身近な人と親しみ関わりを深め、愛情や信頼感を持つことができています」と、幼稚園教育要領*1に示されている「ねらい」を押さえたコメントを添えます。コメントを幼稚園教育要領とリンクさせることで記録がいっそう意味あるものとなるわけです。
私が訪れたニュージーランドの園の責任者は「教育要領を柱としたドキュメンテーションを通じて、保育への税金投入について説明責任(アカウンタビリティ)を果たしているのです。」と語っていました。さらにはドキュメンテーション評価が高い保育者について、昇給や昇進の機会があるといいます。保育記録のイメージが強いドキュメンテーションですが、いくつもの役割を果たしていることがわかりますね。
みなさまの園に取り入れる際には、どのようにドキュメンテーションを使うのか、記録の効率化も含め目的を定めてから始めるといいかもしれませんね。
<注>*1 写真には2歳児も写っていますが、4歳児の幼稚園教育要領と保育所保育指針の内容は同一なため、本コラムではティファリキ(教育要領)に合わせ、幼稚園教育要領と記述しています。
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