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みなさん、こんにちは!
前回は「投げる動作」の上達に効果的な室内遊びを紹介しました。
今回は「危機回避能力を身につける」というテーマでお話しします。
▼前回の記事はコチラ
今回のテーマである危機回避能力、この力はなぜ必要なのでしょうか。具体的な話も交え、お伝えします。
安全に過ごすために必要な環境設定ですが、突然に起こるのが「災害」です。 そのためにも保育園、幼稚園や学校など福祉施設・教育機関では防災訓練を定期的に行い、火災や地震等の災害から身を守るためにどのような行動をとるべきか学習しています。そして自宅や外で災害が起こった場合でも、自分で考え正しい選択をできるように、危機回避能力や危機対応能力を子どもたち自身が身につけておくこと。これはとても重要です。
2018年山口県で2歳児の男の子が行方不明になりました。最悪の事態が予想される中、スパーボランティアの男性が行方不明から4日目で無事保護したというニュースは、皆さんにも記憶があると思います。
この2歳の子どもが生き延びるためにどう判断し、4日間どのように過ごしたのか、ということにも興味があります。このように様々な困難が起こるこの世の中を生き抜くためには、危機を乗り越える能力が必要です。2歳の子どもが山の中で大きな怪我もなく生き抜くということは、とてもすごい能力をもっています。
さてこのコラムでは、『からだを操作する能力を高めて危機回避能力を高める』=『子どもたちのからだの使い方』について話を進めていきます。
幼児期には、バランスを崩して転倒する場面が多くあり、「転倒」をした場合の怪我は「打撲、裂傷、擦過傷、骨折」などがあげられます。
転倒とは、「からだのバランスを失って倒れる。重心を失って倒れること」です。これを避けるために必要なことは何でしょうか。
乳児期、人は、「転倒」しながら歩いていけるようになっていきます。
スキーも転倒して起き上がる、柔道も受け身から学ぶ、様々なスポーツは「転倒」と「起き上がる」ことを繰り返していきながら「バランスが保てるようになり」「転倒しても体をどのようにしていくと体に負担や怪我のリスクがなくなるか」体で覚えていきます。
人は、転ぶことで転び方を覚え、歩けるようになるのです。
人は、転倒を経験し歩く力を身につけるとお伝えしました。
今、子どもたちが歩く道は、安全に暮らしていくために「おうとつ」をなくし、「段差」をなくし、「砂利道、ぬかるんだ道」などは、きれいに舗装された道となっています。
そんな中、安全な環境で「不安定な場所」をつくる、その事で獲得できる力があります。
「発育発達に合わせ、その子自身で体を支える力を育てる」静的筋持久力
「バランスを崩しても立て直すことができるようにする」平衡性
「どのくらい体を傾けると、倒れるのか自分自身で経験する」平衡性
「発育発達に合わせて、筋肉や関節の柔らかさを高める」柔軟性
「全力、思い切り動き、一気に筋力を発起する能力を高める」瞬発性
「身体あるいは身体部分の向きを素早く変える能力を育てる」敏捷性
次は、これらの力を高める運動遊びを紹介します。
今回紹介する運動遊びも、すべて室内でできる遊びです。ぜひ園やご家庭で実践してみてくださいね。
準備:コーン、マット
動作:横回りをしながら、コーンをタッチする。
point:転がりながらコーンの位置を確認するように伝える。位置を確認できるようになったら、コーンの一番上をタッチするように伝える。
準備:コーン(4色)、コーンと同色のカード(数枚)、マット
動作:色カードを引き、自分の引いたカードと同じコーンを横回りしながらタッチする
point:転がりながらランダムに置かれたコーンから自分のカードの色と同色のコーンの位置を確認するように伝える。タッチ動作に変化をつけると一層楽しめる。
タッチ動作の様々なパターン(例):
・カードを持ちながら手でコーンをタッチする
・カードでコーンの一番上をタッチする など
準備:数字カード(数字は年齢により設定)、マット
動作:横回りしながら1~7のカードに順番にタッチする。(置く数字は、数の理解、又転がる距離により設定)
point:順番に置かれた数字カードの位置を確認しながら転がるように伝える。数字を同じ方向や動画のように左右ランダムに置く。転がる距離を長くし、左右ランダムに置くなど変化をつけると一層楽しめる。
準備:数字カード(数字は年齢により設定)、薄い柔らかいマット1枚から3枚
動作:段差に乗り、ジャンプ降りをしたあと横回りしながら1~3をタッチする。
point:段差は、片足ずつ乗り、慣れてきたらジャンプ乗り降りをした後、順番に置かれた数字カードの位置を確認しながら転がるように伝える。
※乗るマットは柔らかいため、バランスをとりながら乗る。
※慣れてきたら、マット数を増やしていく。その場合よりバランスをとるように伝える。
※ジャンプが完成している子どもたちは、ジャンプで乗り降りすると、よりバランスをとる必要が出るため少し難易度が高くなる。
対象:グーパージャンプが完成している
準備:棒状のもの(段ボール、新聞紙、牛乳パックなどでも作成可能)
※今回は体操棒を使用 年齢:4歳児
保育士リズム(1、2、3) 閉じる×2 開く×1
子どもの肩幅ほどに「開いて持った棒を床へ2拍子たたき」リズムをとり、その後「棒を閉じる」
こどもリズム(1、2足踏み~両足パー)
保育士の1,2のリズムに合わせ、開いている棒の中で足踏み2回
保育士が棒を開くと同時に両足パーでジャンプして棒を跳び越える
保育士の1,2のリズムに合わせ、開いている棒の中で両足ジャンプ2回
保育士が棒を開くと同時に両足パーでジャンプして棒を跳び越える1回
リズムを覚えたら、繰り返し続けたり、パターン1と2をつなげたり、パージャンプの際1/2回転して着地したりと様々な動作を組み合わせることで、平衡性、敏捷性、瞬発性など、様々な調整力を養うことができます。
いかがでしたでしょうか?
今回は、運動遊びを通じた危機回避能力の獲得をテーマにお伝えしました。
運動遊びに数や形色遊びなどを組み合わせることで、知的能力や見る力などはぐくむこともできます。
危機回避に必要な「からだを操作する能力」については、筆者の著作で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてくださいね。