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みなさん、こんにちは!
このコラムは、子どもたちの運動能力を高めるために様々な角度から「からだを操作する力をはぐくむ」方法を紹介していきます。
幼少期に体を思い切り動かしのびのび過ごすと、何事も意欲的に取り組む態度が養われ、健やかな心の育ちも促す効果があります。
ぜひ、日頃子どもとかかわる中で、参考にしてくださいね。
今回は、~「転がる・跨ぐ・回る」でバランス力を高める~です。
テーマにもあります、バランス力の「バランス」をインターネットで調べると…
『状態や現状が一定に保たれ安定していること。「釣合い」「均等」「調和」』といった説明が出てきます。
そこで皆さん、バランスがつく言葉で何が思い出されますか?
専門学校の学生たちに質問すると最初に返ってきた回答は…「バランスボール」。
次に「食事のバランス」「左右のバランス」「容姿の魅力のバランス」などが挙がりました。
「今日の洋服バランスがいいね」という表現にもつかいます…なるほど。
このコラムでお話ししたいバランス力は、バランス感覚のことです。
運動神経の構成要素の一つで、全身を空中などの様々な場面で保つことや、崩れた時に体勢を素早く立て直す能力である調整力※の中の「平衡性」をピックアップしていきます。
※調整力とは、からだの動きを調整する能力のことです。
おおむね4歳の頃には、全身のバランスがとれるようになり、からだの動きが巧になります。そして平衡性は発育と共に高くなり20歳の頃にはほぼ完成してきます。
では体はどのようにしてバランスをとっているのでしょうか。
人間は、自分の周りの空間や位置を眼、内耳(半規管・耳石)および筋肉や骨からの体重のかかり具合、筋肉のどこに力が入っているかという情報を脳に伝えています。脳は伝えられた情報を統合して、からだのバランス(平衡覚)を微妙にコンロールしています。
私たちは、毎日立ったり、座ったりしています。床に座った状態から立ち上がる際も「眼、内耳、筋肉、骨」から「脳」へ伝えバランスをとって上手に立ち上がることができます。
人間は二足歩行ができるようになった頃から毎日「バランス」をとって生活をしています。
「バランス」が特に必要な運動としては、「平均台をまっすぐ渡る」「片足バランスを長時間する」「目を閉じて片足で立つ」「段差につまずかず歩く」「ジグザグ走」「綱渡り」などの動きがあります。
このコラムでは、「動き(運動)」を「空間や位置など多様な環境ごと」に変化させて、眼、内耳(半規管・耳石)および筋肉や骨からの体重のかかり具合、筋肉のどこに力が入っているかという情報を脳に伝えてバランス力(平衡性)を高める「3つの動き」に注目します。
それは「転がる、跨ぐ、回る」です。
バランス感覚を養う動きがたくさんある中、この「転がる、跨ぐ、回る」は、単純ですが奥が深い代表的な動きであり、発達していく体の諸機能をつかって動こうとする幼児期に適切にアプローチできる動きとなります。
まずは、この「転がる、跨ぐ、回る」の基本動作・動きのポイントを確認しましょう。
【転がる】
動作:両手、両足を伸ばし横へ転がる(右回り、左回り)
動きのポイント:両手両足をしっかり伸ばして、全身を使って転がる
養える主な調整力:平衡性(バランス)
内耳は三次元の運動を感知します。コロコロ転がりながら「今、下を向いている、上を向いている」「曲がってしまった、まっすぐ回ろう」など、体で感じながら楽しく回転します。
マットを敷き、硬さ、柔らかさを変化させたり、凹凸デコボコにしたり、つるつる、ザラザラなど、感触を楽しみながら転がります。
【跨ぐ】
動作:片足を上げ、股をひらいて越える
動きのポイント:片足を上げ、床についている足に重心を移動させバランスをとりながら股をひらき越える
養える主な調整力:平衡性(バランス)
目標物をセッティングして楽しく跨ぐ。写真は連続のものですが、片足のみでも楽しいです。
足首程度の高さではバランスをとって跨ぐ。膝程度の高さでしたらその器具を手で支えて跨ぐのもよいでしょう。まずは利き足から。2歳児になると写真のように左右できるようになり、階段上りも上手になります。(※写真の子どもは2歳児です)
【回る(前に回る)】
動作: 両手をつき、肩よりも腰を高くして前にまわる
動きのポイント:手のひらをしっかりと開き、腕を伸ばし体を支える。背中を丸め肩をマットにつきなから前に回る。
養える主な調整力:平衡性(バランス)
両手で体を支えて背中を丸くして前に回る。マット運動の「前転」ができることが目的ではなく、ここでは前に回ることを楽しみます。例え曲がってしまっても、起き上がれなくても、回って三次元の運動を楽しみます。「回る・転がる」などの回転系は幼児期にはおすすめの動きです。実はこの動き「バランス感覚」の向上だけではなく、「身体操作・危機回避能力」の向上にもつながります。
次回後編では、具体的な実践方法をご紹介します。
お楽しみに!!
執筆者の著書で、より詳しく子どもの運動について学べます!