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「転がる・跨ぐ・回る」でバランス力を高める~子どもの発達に合わせたアプローチ~

みなさん、こんにちは!
このコラムは、子どもたちの運動能力を高めるために様々な角度から「からだを操作する力をはぐくむ」方法を紹介していきます。幼少期に体を思い切り動かしのびのび過ごすと、何事も意欲的に取り組む態度が養われ、健やかな心の育ちも促す効果があります。
ぜひ、日頃子どもとかかわる中で、参考にしてくださいね。

前回の前編では、以下の内容を取り上げました。

▼「「転がる・跨ぐ・回る」でバランス力を高める」に関連する記事はコチラ

子どものバランス力を伸ばそう!

☆体はどのようにしてバランスをとっているのか
☆「動き(運動)」を「空間や位置など多様な環境ごと」に変化させ、眼、内耳(半規管・耳石)および筋肉や骨からの体重のかかり具合、筋肉のどこに力が入っているかという情報を脳に伝えてバランス力(平衡性)を高める「3つの動き」(転がる・跨ぐ・回る)を紹介

様々な環境の中でもバランスをとり、体を立て直すことができる能力は、生きていく中でとても大切な運動能力となります。大人になり年齢が高くなるにつれ、バランスをとりながら歩けることが健康に生活できることにつながります。
バランス力が高いということは、まっすぐ「平均台」の上を歩けることだけではないということです。言い換えれば平均台がなくても平衡性は高めることができます。

ここで注目したいのは、「空間や位置など多様な環境ごと」という点です。

発達していく体の諸機能をつかって動こうとする幼児期に、「転がる・跨ぐ・回る」を適切にアプローチしていきましょう。このコラムでは、おおむね2歳未満までの子どもたちへ運動機能の発育発達に合わせたアプローチ方法を紹介します。

ここでも大切なのは、安全な環境を整えて、無理せず子どもたちの状況にあわせてアプローチすることです。目の前の子どもたちに合わせて実施していきましょう。

寝返りがしっかりとできるようになった頃から

まず、寝返りの動き確認しましょう。 赤ちゃんの寝返りは下半身の動きが重要です。
はじめに腰をひねり、足を交差させたあと「足→腰→上半身」と順に体を回転させて寝返りをします。ここで確認することは、「寝返りができるようになるための練習」ではなく「寝返りができた赤ちゃんに対しての運動」です。

赤ちゃんが体全体を左右に反ったり、ひねったり、くねらせたりという動作を繰り返して「動きたいサインをキャッチ」したら…バランス感覚を高める「転がる」のスタートです。

【転がる】
動作:横へ転がる(右回り、左回り)
動きのポイント: 体全体を動かし始めた赤ちゃんが、機嫌のよい時に行いましょう。

*体全体を動かし始めた赤ちゃんが、機嫌のよい時におこないましょう。

赤ちゃんは仰向けの状態でおこないます。
両手で赤ちゃんの左右膝の部分を持ち、片足を上にして足を交差させ、腰を浮かせながら下半身~上半身を回転させていき、うつぶせの状態にします。
次に仰向けで寝かせ、今度は反対へ転がります。
実施の際は、周りの安全を確保しておこないましょう。また赤ちゃんのペースに合わせ楽しい雰囲気の中、機嫌をみながら行っていきましょう。

ハイハイ、つかまり立ち、伝え歩きができるようになる頃から

この時期は転がるだけではなく、ハイハイ、つかまり立ち、伝え歩きと行動範囲が広くなってきます。機嫌よく動く時間を把握して「ハイハイ、つかまり立ち、伝い歩き」が安全に自由にできる環境を整えます。その中に「コロコロ」と転がる場所もセッティングをして一方方向へ転がる環境にします。保育士も一緒にコロコロと転がり、動きの楽しさを見せてあげましょう。

【転がる】
動作:横へ転がる(右回り、左回り)
動きのポイント: 活発に動く時間を把握して機嫌のよい時におこないましょう

活発に動けるようになってきたら「コロコロ」一方の方向へ転がる楽しさを経験させてあげます。
なだらかな坂を使ってコロコロと2回転から3回転。
写真のようなセティングも子どもたちに人気です。このころは、ふかふかな所、デコボコな所、自由にコロコロと楽しみましょう。 *補助をするときは、膝の部分を持ちクロスにしてあげます。また手は万歳にして上にあげるか、肘が曲がってもよいので肩よりも手の平が上に来るように見てあげます

【跨ぐ】
動作:子どもには、保育者の両手の指を握らせ、保育士は子どもの手を握り一緒におこないます。
動きのポイント: 活発に動く時間を把握して機嫌のよい時におこないましょう。

補助は、後ろからおこないます。
目標物(写真は、ゴムを使っています)を保育士が後ろから足を上げて跨ぎ、一緒に足を上げるように促します。ゴムを越えたら後ろの足を上げるように見本をしながら、上げるように促します。
*写真*黒ゴムをランダムに張る。写真は1歳児。歩き始めは、保育士が両手を後ろから補助をしながら、保育士も一緒に跨ぐ。

歩き始め・自分の意志で体を動かせるようになる頃~2歳未満

歩き始め活動範囲が広くなると、様々な*基本運動を獲得していきます。
「転がる」「跨ぐ」「回る」を多様な環境、多様な空間でおこない「子どもたちの動きたい」という気持ちを満足させるようにしていきましょう。

【転がる】

両手を上にあげて体全体を使い、コロコロと転がります。デコボコ、狭い空間、坂、硬い、柔らかいなど、環境や空間を変化させるだけで、様々な「転がる」に変化します。

【跨ぐ】

様々な高さのものをひとつから連続で跨げるように環境設定をします。
跨ぐものが子どもの腿の高さの場合は、写真のように手で跨ぐ目標物(写真/棒)を待ちながら、または支えながら体重を移動させる。ギリギリ足が付かない高さの場合は、保育士がサポートに入り、腰を補助する。体重を移動させる経験も子どもたちのバランスを養う動きとなり、越えることができた時にも有能感となり自信につながります。

【回る】

正座をした保育士の上に乗り、両手をつき回る。保育士は子どもの腰を持ち、上に引き上げながら回りやすくしてあげて前に回る。慣れてくると自分から体をまるめながらできるようになる。保育士は、こどもの様子をみながらサポートします。

「転がる、跨ぐ、回る」とうい基本運動は、お部屋でも様々な環境設定で簡単にでき、なおかつ、三次元に占めている状態を把握するのに適切な運動です。

この3つの動きを中心に、からだの動きを「空間や位置など多様な環境ごと」に変化させ、眼、内耳(半規管・耳石)および筋肉や骨からの体重のかかり具合、筋肉のどこに力が入っているかという情報を脳に伝えてバランス力(平衡性)を高めていきましょう。

今回は、2歳児未満の紹介をしました。

『走る・跳ぶなど体を思うように動かせるようになった頃の2歳児』から『活発に遊び、ダイナミックな遊びができる(手先が器用になる)頃の6歳児』は、「子どものからだを操作する力をはぐくもう」(萌文書林)を読んでくださいね

それでは次回のコラムでお会いしましょう。

執筆者の著書で、より詳しく子どもの運動について学べます!

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